2009年8月4日火曜日

アラトリステ



















スペイン映画「アラトリステ」のDVDを観ました。
スペインでは2年前に大ヒットとなった映画で、
日本では昨年末上映、最近DVD化となりました。

原作はアルトゥーロ・ペレス・レベルテの冒険小説。

私にとってこの作家は国営TVで特派員として戦地や僻地でレポートしていた
ジャーナリストとしての印象がとても強いのですが、
後に小説家に転身し、次々とベストセラーを出しています。
初期のヒットと言えば「呪いのデュマ倶楽部」。

ロマン・ポランスキー監督、ジョニー・デップ主演で「ナインスゲート」
として映画化されたのをご存知の方も多いかもしれません。

「アラトリステ」は96年に出た冒険長編小説で、

原題は「El Capitan Alatriste(アラトリステ隊長)」...と言っても、
私は読んだ事がないので感想が述べられないのですが、
シリーズ化され現在6巻まで次々とベストセラーとなり
冒険小説というだけではなく歴史小説というスタンスでも
年齢を問わず多くの人に読まれている、実におもしろいお話だそうです。

映画の方は「ウエルカム ヘブン」のヤネス監督。

俳優陣もスペインの旬な俳優たちでかためていますが、
主役のアラトリステ役はアメリカのヴィゴ・モーテンセンが抜擢、
スペイン語での熱演です!
Superミーハーな私は一時「ロード・オブ・ザ・リング」
ヴィゴのアラゴルンに随分とハマったものでした。
それでこのスペインつながりに、久々の中世の衣装姿に、
期待しないわけがありません!

さて、舞台は17世紀。

新大陸発見による黄金時代が輝かしかったスペインにも
大きな陰りが落ち衰退の途をたどっていた頃。 
フェリッペ4世の治世下、寵臣オリバーレス伯爵に国は託されていました。
当時80年戦争の真っただ中。プロテスタントがどんどんと勢力を
増していたこの時代。
80年戦争はプロテスタントのオランダが独立を訴え勃発した
宗教戦争であり独立戦争です。

主人公のアラトリステはフランドルで傭兵として戦っていました。

勇敢な剣の達人はその名を轟かしていたのでしょう。
しかし所詮傭兵。マドリッドに戻ればその暮らしは苦しく、
刺客の仕事も承諾せざるを得ません。宮廷の陰謀にも巻き込まれて行きます。
再びフランドルの戦場、ブレダの包囲戦に赴くアラトリステ。

数年後マドリッドに戻るとオリバーレス伯爵から密輸の黄金を
略奪するという任務の依頼が。
また時は流れます。

その頃80年戦争もまだ終息を見ない中フランスとの30年戦争も
激しさを増していました。アラトリステは再び戦場へ。
ロクロワの戦いへと身を投じます。
冒頭で亡くなる戦友の息子との親子のような関係、

愛する人マリアとの悲恋なども含め物語は展開されていきます。

アラトリステは架空の人物ですが、歴史的事実をバックグラウンドに、

実在の人物も次々と登場します。友人は詩人のケベードだし、
マリアさえも実在の人物らしいです。
歴史という大きな波に流されながらも、沈着冷静、勇敢果敢、

義を重んじ人情厚く、誇り高い・・そして哀愁をまとっている
アラトリステの魅力がよく表れています。
「その論理観と忠誠心は日本の武士道にも通じていると思った」

とヴィゴがインタビューで語っていたようです。なるほど。。

せっかく大長編大作なのですから、3部作ぐらいで

まとめてほしかったですね。。
しかしこの映画、ベラスケスの絵をイメージしたと言うとおり、

映像がとても美しい。この映像美はスペインの監督とクルーで
なければ出せない素晴らしさでしょう。ブレダの開城のシーンは
まさにベラスケスの絵そのものですし、愛し合いながらも一緒には
なれなかったマリアとの場面も絵画のようでした。
マドリッドの居酒屋の雰囲気も埃っぽくて汚い加減が雰囲気抜群!



 






ほほほ〜〜♡



ヴィゴは本当に素晴らしい演技で、はまり役でした。。
ただただ。。。周りが濃いのも手伝い、ラテンではない美しさが
際立ってしまった・・・というところに大いに目をつぶると、
実にハマる映画ですよ!
戦争の予習とベラスケスの絵は前もってネットなどで

チェックしておくと一層楽しめると思います。
(「セビリアの水売り」「ブレダの開城」フェリッペ4世やオリバーレス伯爵の肖像画など)

ところで、またまたこの原作者のぺレスーレベルテですが。。
ジャーナリストだった頃は細身の体に神経質そうな顔に大きな眼鏡。

レポートでは戦場の恐ろしさが直に伝わってきて、
彼を見るとある意味緊張感が走ったものです。
そんな彼が書いた戦争ものともなると時代は違うとしても
やけにリアルです。
それがまた良いものを書かせたんでしょうね。
しかし最近の写真を見ると、おっとりとした優しい良いお顔になって、
なんだかこちらもほっとしましたよ。。

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